さて、「ドグマチール」というお薬について少し説明しますね。上の写真の緑色のケバケバしい色のカプセルです。(他の剤形もあり)

ドグマチールは1973年に発売されたお薬で、かなり古い処方です。

このおくすりは非常にユニークな働きをします。というのも、発売当初はなんと胃薬として発売されており、事実神経性の食欲不振などには、頻繁に処方されていた時代もありました。

次第に「うつ病に効果がある」「統合失調症にも効果がある」ということが分かってきて、現在ではうつ病に使われることが一番多いと思われます。

ただ、このお薬・・・副作用で、「高プロラクチン血症」というのがあります。

プロラクチンというホルモンが血中で高値になってしまう副作用ですが、これによって、女性ホルモンのバランスが乱れてしまいます。

普通女性は授乳中というのは、生理は、止まっています。

これは、乳として分泌されている乳汁が血液から出来ているため、生理の出血とダブルになってしまうと母体に大変な負担がかかってしまうためです。

驚いたことに男性でもこの、ドグマチールというお薬を服用すると乳汁がでてくる場合があるようです。

前述のRさんは、ストレスからくる食欲不振のために心療内科から、このドグマチールが処方されていました。

3ヶ月間漢方とストレスに対応する処方を服用していただいたにも係わらず、一向に改善が見られないのは、私は、このドグマチールの副作用であると断定しました。

そこで、Rさんに「ドグマチール」を他のお薬に変更してもらえるように医師に相談してみることを提案しました。

しかし、Rさんは、全く食べれなくなった状態から少しでも食べられるようにしてくれたのは、この「ドグマチール」のおかげ!!と心の底から信じていたために、服用を全く止めてくれませんでした。

もちろん、漫然と漢方などを繰り返していても全く効果はでてきませんでした。・・・原因となっているであろう「ドグマチール」をやめていないからです。

ある頃を境にして、Rさんは、ピタリとうちのお店に来なくなりました。

どうしているのかなぁ~と気にはなっていましたが、電話もしずらく、いつかきてくれるのではないかと来店を待っていました。

そして、約1年が経過しようとする頃、Rさんがひょっこりとうちのお店に顔を出しました。

とてもふっくらとされて、にこやかな表情でした。

「いや~、あの後ピタッとおみえにならなかったので、どうしているのかなぁ~とずっと思っていたんですよ」とお話しすると

「実は、もう限界までいっちゃって、病院を他の精神科に変えたんです。そうしたら、そこのドクターが【ドグマチール】と他の数種類の薬を全部止めて、このお薬だけにしなさい・・と言われて、前の心療内科の薬をピタッと止めたら嘘みたいに体調が良くなってきたんです」

「そうですかぁ~。良かったですねぇ~。本当にお顔の色も良くなって、見違えちゃいますね」

彼女はそれ以上の会話をせずに、そそくさとお店を出て行きました。

良かれと思って服用していたお薬が原因で苦しめられていたRさん。私の思いが届かずにすごく歯がゆい経験をしたので、結構昔でしたけど、この記憶は克明に私の心に残っています。